事業再構築補助金の目的は?受給できる人は?補助対象者の範囲

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、売り上げ回復の見込みが立たない企業を支援するため、国によって「事業再構築補助金」が新設されました。

今回は、事業再構築補助金の目的と、補助金を受給できる補助対象者の範囲について解説します。
補助対象者に該当する可能性のある中小企業・個人事業主の方は、弁護士等の専門家に相談しながら補助金申請ができないか検討してみましょう。

1. 事業再構築補助金の目的

事業再構築補助金の主要な目的は、新型コロナウイルス感染症の存在を前提とした社会(ウィズコロナ・ポストコロナ)に対応するための事業再構築を支援することにあります。

新型コロナウイルス感染症は、飲食店の客数の減少などに代表されるように、消費者の行動を大きく変容させました。
依然として感染症が収束の兆しを見せない中、コロナ以前の状況に社会が完全に巻き戻ることは考えにくい状況にあります。
そのため、コロナ禍によって売り上げ・収益が減少した企業は、従来どおりのビジネス手法で事業を立て直すことは困難といわざるをえません。

ウィズコロナ・ポストコロナの時代に適応して売り上げ・収益を回復するには、抜本的な事業の再構築が必要になります。
そのためには、設備投資・広告投資などのまとまった資本投下が必要ですが、経済的な体力が十分でない中小企業や個人事業主にとっては、資本の確保が困難であるのが実情です。

そこで、ウィズコロナ・ポストコロナの時代への適応を目指して、新分野展開や業態転換等に取り組もうとする企業を支援するため、事業再構築補助金の制度が設けられました。

2. 事業再構築補助金を受給できる人・企業|補助対象者の範囲は?

事業再構築補助金の補助対象者は、「中小企業者等」と「中堅企業等」の2種類に分かれます。
多くの企業や個人事業主がいずれかに該当すると考えられますので、ご自身のケースに当てはめて確認してみましょう。

2-1. 中小企業者等

「中小企業者等」に該当するのは、以下の要件を満たす法人・団体・個人です。

① 会社または個人の場合

資本金※1または常勤従業員数のいずれかが、下表の数字以下であること
※1 資本金=資本の額または出資の総額

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業3億円300人
卸売業1億円100人
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5000万円100人
小売業5000万円50人
ゴム製品製造業 (自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く)3億円900人
ソフトウェア業または情報処理サービス業3億円300人
旅館業5000万円200人
その他の業種3億円300人

ただし、次のいずれかの要件を満たす場合には、当該会社または個人は大企業※2(中堅企業)とみなされます。
※2 大企業=中小企業者等・中堅企業等のいずれにも該当しない法人・団体・個人

(a) 発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業(中堅企業)が所有している場合

 

(b) 発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を大企業(中堅企業)が所有している場合

 

(c) 大企業(中堅企業)の役職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている場合

 

(d) 発行済株式の総数または出資価格の総額を(a)~(c)に該当する中小企業者が所有している場合

 

(e) (a)~(c)に該当する中小企業者の役職員を兼ねている者が役員総数のすべてを占めている場合

 

(f) 応募申請時点で、申告済みの直近過去3年分の各年(事業年度)の課税所得の年平均額が15億円超である場合

※(f)に該当する場合、中堅企業とみなされます。

② ①以外の法人・団体

  • 企業組合
  • 事業組合
  • その他法律により設立された一定の組合
  • 公益法人等

※従業員300人以下の場合に限る

<チェックポイント>

「中小企業者等」に該当するかどうかを判断するためには、基本的には業種に応じた資本金・常勤従業員数の上限を超えていないかを確認すればOKです。
ただし、「大企業」や「中堅企業等」に当たる規模の会社との資本関係や役員の兼任などがある場合には、例外要件に当てはまらないかを確認する必要があります。

個人事業主・株式会社・合同会社などであれば、大半が「中小企業者等」に該当するでしょう。

2-2. 中堅企業等

「中堅企業等」に該当するのは、以下の要件をすべて満たす法人・団体・個人です。

① 以下のいずれかに該当すること

  • 会社
  • 個人
  • 企業組合
  • 事業組合
  • その他法律により設立された一定の組合
  • 公益法人等

② 中小企業者等に該当しないこと

③ 資本金の額または出資の総額が10億円未満であること

④ 資本金の額または出資の総額が定められていない場合は、常勤従業員数が2000人以下であること

<チェックポイント>

「中堅企業等」に該当するためには、資本金の額・出資の総額が10億円未満であることが最大のポイントになります(10億円以上になると「大企業」)。

2-3. 中小企業者等と中堅企業等の違いは?

「中小企業者等」と「中堅企業等」では、事業再構築補助金の補助金額および補助率や、利用できる枠に違いがあります。

中小企業者等中堅企業等
通常枠〇 補助金額:100~6000万円 補助率:2/3〇 補助金額:100~8000万円 補助率:1/2(4000万円超の部分は1/3)
卒業枠〇 補助金額:6000万~1億円 補助率:2/3×
グローバルV字回復枠×〇 補助金額8000万~1億円 補助率:1/2
緊急事態宣言特別枠〇 補助金額:従業員数に応じて異なる 補助率:3/4〇 補助金額:従業員数に応じて異なる 補助率:2/3

各枠の概要や補助内容についての詳細な説明は別記事にて行いたいと思います。

<チェックポイント>

「中小企業者等」または「中堅企業等」のどちらに該当するかを確認して、正しく申請を行いましょう。
不明な点があれば、弁護士等の専門家にご相談ください。

3. まとめ

事業再構築補助金は、コロナ社会に適応するための事業再構築を検討している事業主の方が幅広く利用できる制度となっています。
ご自身の事業が受給対象になっているかどうか、補助金申請が可能かどうかを確認したい場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。