遺言書があっても遺産分割協議が必要な場合とは?

「遺言書を作成すれば遺産分割協議をせずに済む、トラブルも起こらない」
そのように考えて、遺言書を作成する方も多いのではないでしょうか。

しかし、遺言書の形式や内容によっては、遺言書があっても遺産分割協議をしなければならないケースがあります。 遺言書による相続対策を行う際には、遺産分割トラブルを防止できるような形式・内容になっているかどうかを、慎重に確認することが大切です。

遺言書があっても遺産分割協議が必要となるケース

遺産分割協議をしなくて済むように遺言書を作成したとしても、次のような場合には、遺産分割協議が必要になってしまいます。

遺言書が無効である場合

遺言書には、民法で厳格な形式要件が定められています(民法968条以下)。形式要件を欠いた遺言書は、全体が無効になってしまうので要注意です。
遺言が無効となった場合、改めて遺産分割協議を行い、遺産の分け方を話し合う必要があります。

チェックポイント

遺言無効を避けるためには、公正証書遺言を作成することがお勧めです。

公証人が遺言の形式要件をチェックしてくれるので、遺言無効のリスクをかなり抑えることができます。

遺言書で配分が指定されていない遺産がある場合

被相続人が亡くなった時点で、遺言書に記載された財産以外にも、他の財産を所有しているケースがあります。
この場合、遺言書によって分け方が決められていない財産については、遺産分割協議によって分け方を決めなければなりません。

遺言書の文言が不明確な場合

遺言者が自分で文言を考え、そのまま作成した遺言書の場合、文言の内容が不明確になっていることがよく見受けられます。

  • 文意が通らない
  • 財産が特定されていない
  • 2通り以上の意味に解釈できる

など、遺言内容に不明確な部分がある場合には、その部分が無効になる可能性もあります。そうなると、遺産分割協議を通じて、改めて遺産の分け方を決めなければなりません。

遺産分割トラブルを防止する遺言書作成のポイント

遺言書によって遺産分割トラブルを防止するには、形式・内容につき、以下のポイントに留意したうえで作成する必要があります。

民法上の形式要件を守る

大前提として、遺言の方式に応じて、民法で定められた形式要件を遵守する必要があります。
形式要件に関するミスは、特に自筆証書遺言を作成する場合に発生しがちです。自筆証書遺言を作成する場合には、弁護士などに形式要件のチェックを依頼することをお勧めいたします。

できる限りすべての財産について配分を指定する

遺産分割協議を行わずに済むようにするためには、遺言書の中で、所有するすべての財産について配分を指定しておくことが必要です。
きちんと財産の調査・把握を行ったうえで、すべての財産の配分を漏れなく記載しましょう。

なお、財産が多岐にわたる場合には、すべての財産を特定することが難しいかもしれません。
その場合、少なくとも主要な財産については具体的な配分を指定したうえで、「記載のない財産はすべて〇〇に相続させる」などと包括的な規定を置いておくことも考えられます。

曖昧な文言を避け、遺産の分け方を明確に記載する

遺産の配分を指定する条項を作成する際には、必ず以下の事項が盛り込まれていることを確認しましょう。

  • どの財産を
  • 誰に
  • どのくらいの量(金額)相続させるか

また、条項の内容が2通り以上の意味にとられないように、表現面にも十分気を配る必要があります。
遺言書の条項の明確性について不安がある場合には、弁護士にご相談ください。

チェックポイント

遺言書の内容を明確化するには、対象となる遺産を、他の財産と区別できる形で特定することが大切になります。

たとえば土地の場合、「所在(住所)」「地番」「地目」「地積」の4つで特定するのが一般的です。

特定方法は、遺産の種類ごとに異なりますので、詳しくは弁護士にご確認ください。

まとめ

遺言書の形式に不備がある場合や、内容が不十分な場合には、遺言書があっても遺産分割協議を行う必要が生じます。

遺産分割協議を行うことなく、遺言書のみで相続手続きを完結させたい場合には、形式・内容の双方に十分留意して遺言書を作成しなければなりません。
遺産分割トラブルを防止できる遺言書を作成した場合は、一度弁護士にご相談ください。