法定相続分の計算方法は?相続人構成に応じたパターンを解説

法定相続分は、遺産の配分について大きな影響を与えるため、すべての相続関係者にとって重要な概念です。

今回は、法定相続分がどのように計算されるのかについて、相続人構成に応じた計算パターンを中心に解説します。

遺産の配分はどのように決まる?

相続が発生した場合、遺産の配分は「遺言→遺産分割協議→法定相続分」という手順で決定されます。

①遺言
遺言書があれば、その内容に従って遺産の配分が決まります。

②遺産分割協議
遺言書がない場合、相続人間で話し合って遺産の配分を決定します。

③法定相続分
最終的には遺産分割審判において、法定相続分を基準として遺産の配分が決定されます。

上記のように、法定相続分によって遺産の配分が決定されるのは、遺言書がなく、かつ遺産分割協議がまとまらなかった最終段階です。

しかし、遺言書で遺産の配分を指定する場合にも、兄弟姉妹以外の法定相続人について、法定相続分に応じて認められる「遺留分」に配慮しなければなりません。
また、遺産分割協議で遺産の配分を決定する際にも、協議不成立となった場合は審判に移行することを想定すると、法定相続分をベースとして話し合いが進行するケースが多いです。

このように法定相続分は、相続のあらゆる局面において、遺産の配分決定に対して大きな影響を与える概念といえるでしょう。

相続人構成に応じた法定相続分の計算方法・計算例

法定相続分は、民法に従い、相続人構成に応じて各相続人に割り当てられます。

以下では、4パターンの相続人構成について、法定相続分がどのように割り当てられるかを見ていきましょう。

パターン①|配偶者と子

<設例①>
相続人が配偶者A・子B・子Cの3人の場合

配偶者と子は、常に相続人となります(民法890条、887条1項)。
配偶者と子が相続人のケースでは、配偶者に2分の1、子にも2分の1の法定相続分が割り当てられます(民法900条1号)。

設例①では、子はB・Cの2人です。
したがって、BとCが子の法定相続分を均等に分け合った結果(同条4号本文)、A・B・Cの各法定相続分は以下となります。

配偶者A:2分の1
子B;4分の1
子C:4分の1

パターン②|配偶者と直系尊属

<設例②>
相続人が配偶者D・父E・母Fの3人の場合

配偶者と結婚したものの、子どもを作らずに若くして亡くなった場合、直系尊属(両親など)が存命であれば、配偶者と直系尊属が相続人となります(民法889条1項1号)。
配偶者と直系尊属が相続人のケースでは、配偶者に3分の2、直系尊属に3分の1の法定相続分が割り当てられます(民法900条2号)。

設例②では、直系尊属はE・Fの2人です。
よって、EとFが直系尊属の法定相続分を均等に分け合った結果(同条4号本文)、D・E・Fの各法定相続分は以下となります。

配偶者D:3分の2
父E:6分の1
母F:6分の1

パターン③|配偶者と兄弟姉妹

<設例③>
相続人が配偶者G・兄H・妹Iの3人の場合

子がおらず、直系尊属も存命でない場合には、配偶者とともに兄弟姉妹が相続人となります(民法889条1項2号)。
配偶者と兄弟姉妹が相続人のケースでは、法定相続分の割り当ては、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です(民法900条3号)。

設例③では、兄弟姉妹はH・Iの2人です。
したがって、兄弟姉妹の法定相続分を、HとIが均等に分け合い(同条4号本文)、G・H・Iの各法定相続分は以下となります。

配偶者G:4分の3
兄H:8分の1
妹I:8分の1

なお、母親または父親が異なる兄弟姉妹については、父母を共通にする兄弟姉妹に対して、法定相続分が半分になります(同号但し書き)。
たとえば、兄Hが被相続人と父母を共通にする一方で、妹Iは被相続人と異母きょうだいであった場合には、法定相続分は以下のとおり修正されます。

配偶者G:4分の3
兄H:6分の1
妹I(異母きょうだい):12分の1

パターン④|子のみ

<設例④>
相続人が子J・子K・子Lの3人の場合

配偶者不在の場合は、「子のみ→直系尊属のみ→兄弟姉妹のみ」という順位で相続人が決まります。
この場合の法定相続分は、同順位の相続人間で均等に配分されます(異母きょうだい・異父きょうだいの法定相続分については、前述のとおり、父母を共通にする兄弟姉妹の半分となります)。

子J:3分の1
子K:3分の1
子L:3分の1

チェックポイント

代襲相続(子または兄弟姉妹である相続人が、死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合に、その子が代わりに相続権を得ること)が発生した場合、代襲相続人の法定相続分は、被代襲者がもともと有していた法定相続分と同じです。

代襲相続人が複数存在する場合などには、法定相続分が細分化し、かつ遺産分割協議も難航することが予想されるので、弁護士にご相談ください。

まとめ

法定相続分を理解・意識すれば、遺産分割協議を公平かつ建設的に進めることができます。

ただし、実際の遺産分割においては、生の遺産をどのように分けるかを話し合わなければならず、数字上の議論だけでは割り切れない部分も発生するでしょう。
円滑に遺産分割を完了するには、相続人間の意見の調整が不可欠です。

もし遺産分割協議が難航している場合には、お早めに弁護士までご相談ください。